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【読書記録】7つの習慣 第1部パラダイムと原則について 第1章インサイド・アウト(内から外へ)

今回ご紹介させていただく本は、スティーブン・R・コヴィー著『7つの習慣』という本です。

この本はビジネス書としてもとても有名なので、どこかで耳にしたこともあるかもしれません。 

1989年に初版が発行されてから、全世界で3000万部を売り上げるという異常書物です。なぜここまで多くの人に愛されてきているかというと、本著の内容が人間の核心に迫っており、どの分野の人からでも共感できるからでしょう。

私は教育に携わる者として、そういう視点で読みましたが、かなり内容が濃く、第1部第1章だけでも何回膝を打ったことか。

この本を何回かに分けてご紹介したいと思います。 

人格主義の回復

教育現場にいて、このような問題に直面したことはありませんか。以下引用

子供に仕事の大切さを教えたい。しかし、何かを手伝わせようとすると、いちいち指示しなくてはいけないし、そのうえブツブツ文句を言われる。自分でやった方がよほど簡単だ。どうして子供は言われる前に自分から進んで手伝おうとしないのか。(pp.4-5)

わかる~。なんで生徒は先生の気持ちをわかってくれないんだろう。親の心子知らずとは正にこのことよ!

この本の著者、コヴィーさんはアメリカ建国以来からの全ての「成功」に関する文献を研究しました。すると、ある傾向がわかりました。

ここ50年の文献は、表面的なテクニックを教える、一時しのぎの応急処置的手法を教えるものでした。それ以前はどうだったかと言うと、それとは対照的で、永続的な幸福を得られる、根治療法を教えるものでした。筆者は前者を個人主義、後者を人格主義と名付けています。

真の成功を掴むには、テクニックはもちろん大事ですが、それは人格主義の陶冶が土台にあって初めて成立するのです。

  • 個人主義…表面的な成功(才能などに対する社会的評価)
  • 人格主義…真の成功(優れた人格を持つこと)

 上のかっこ内が対義語になっていなくて気持ちが悪いですが、著者はそもそもこの2つを対立概念としては認識していません。人格主義を1次的に獲得した後に、個人主義を2次的に獲得します。

私達の世界を作る「レンズ」

私達は現実世界を見るときに、ある種の「レンズ」のようなものを通して世界を知覚しています。我々はこのレンズを個々に持っています。当たり前に使用しているので、その存在にすら気づかない人もいます。

例えば、ここにカブトムシの幼虫がいたとします。ここには「カブトムシの幼虫がいる」という事実があるだけです。これが現実世界のレベル。普遍の事実です。

しかしこの幼虫を見て、ある人は「気持ち悪い」と言います。またある人は「かわいい」と言います。国が違えば「美味しそう」と言うかもしれませんね。これが、異なるレンズで現実を見ている、ものの見方レベルです。このものの見方をパラダイムと読んでいます。

気持ち悪いと思った人は幼虫から遠ざかります。かわいいと思った人は近づいていきます。美味しそうと思った人はよだれを垂らします。もしかしたらお互いを良く思わず、この3人は後に喧嘩に発展するかもしれませんね。これが行動や態度に現れたレベルです。

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基本的に現実世界(原則)は変化しませんが、パラダイム(我々の価値観)は変化することができます。このパラダイムを良い方向に変化することができれば、次の行動や態度も良い方向に変化するだろうということです。この変化をパラダイムシフト(転換)と呼びます。人格主義はこのレベルに対するアプローチです。なるほど、根治療法ですね。

 成長はプロセスである~生活指導への応用~

我々が他者と衝突するのは、このパラダイムが個々人で異なるからです。逆に言うと、我々が他者と良い関係を築こうとしたら、このパラダイムの相違をきちんと理解しなければなりません。

特に、子どもたちは成長の過程にいるわけですから、彼らが今どのプロセスにいて、何を求め、何に困っているのか、彼らのパラダイムをを真剣に傾聴しなければなりません。

それができず、我々が周りの目を気にするあまり、一方的に彼らに何かを要求しようとするとどうなるか。著者は以下のように指摘しています。

  1. お願いする。頼む。
  2. 理屈で訴える。
  3. 買収する。
  4. 脅迫する。
  5. 実力行使

 これを生活指導に応用してみましょう。

制服を着崩した生徒がいます。指導しないと、生徒から舐められるし、他の先生からも「あの先生は適切な指導ができない」と後ろ指をさされるので、制服を正しく着させようとします。こんな手順で。

  1. 依頼「シャツをしまいましょうね」
  2. 理屈「正しく着ることが校則にも書いてありますよ」
  3. 買収「正しく着たら授業点を上げますよ」
  4. 脅迫「正しく着ないと生徒指導カード発行ですよ」
  5. 実力行使。無理やりシャツをしまう。生徒指導カード発行。何らかの処分を下す。ことによると体罰に発展することも。

う~ん、ありそうですね。ありましたねこんな指導、こんな現場。ゴールの「シャツをしまわせる」は達成できます。しかしこれは対症療法にすぎません。後半の威圧的な指導方法は、教員、生徒という立場を乱用したものです。

自分の人格の弱さを補うために、身体の大きさ、地位、権限、肩書き、容姿、過去の実績などのいわゆる「外的な力」を借りて、自分の言いなりになるように強要しただけに過ぎません。

力を借りることは、以下のような弱さを作り出します。

  • 力を借りた人が弱くなる…物事を成し遂げるために、よりいっそう外的な力に依存するようになるから。
  • 強要された人も弱くなる…自主的な判断や自制の力が育たないから。
  • お互いの関係も弱くなる…協力の代わりに恐怖が生まれ、一方はますます横暴に、そして一方はますます防衛的になるから。

今の具体例に照らし合わせると以下のようになります。

  • 教員は職権乱用・高圧的態度によって、生徒を強要することに依存する。
  • 生徒は何が悪かったのか理解していないので、自主的な判断ができない。その結果、その先生が見ているときだけシャツをしまうようになる。
  • お互いの関係は支配・被支配の関係性しか持たなくなり、次第に学校全体も少年院のようになっていく

ではどうすればよかったか。筆者は「内的な力」を活かし、子供たちに選択の自由を与えるに訴えることが重要だと言います。

「内的な力」とは、

  • 真の分かち合い…相手のパラダイム(価値観)の理解
  • 成長の原則に対する理解…今はシャツを出すことがかっこいい時期であるかもしれない。今は成長のプロセスにいることを理解する
  • 子供への愛…説明不要
  • 子供の成長を思う心…この指導で、子供にどういった大人になってほしいのか

のことを指します。

生活指導の最大の仕事は傾聴にあります。先程の悪い指導1~5は傾聴とは程遠く、こちらの力で相手をどうにかしようといういわばマウントです。

インサイド・アウトという新しい考え方のレベル

悪い指導1~5のもうひとつの悪い点は、「相手」をいかに丸め込むかというところに主眼があるところです。

ここまでの話でもうおわかりの通り、まずやらなければならないのは、自分自身の内面(インサイド)を先に変えないと駄目ですよ、ということです。相手(アウトサイド)が変わっていくのはその後です。

アウトサイドから先に変えようとすると…

  • 被害者意識に悩み、自由を束縛され不幸になる
  • 自分のうまくいかない状況の責任を周りや環境のせいにする

という不幸なマインドが生まれてきます。

本著の提唱する7つの習慣を通して、このインサイド(=パラダイム=ものの見方=価値観)を変えることで人格主義の土台を作りましょうということです。

最後に

まだ第1部の第1章ですよ。内容濃いですね~。

さて、最初の引用例、何が問題かわかっていただけたかと思います。

子供に仕事の大切さを教えたい。しかし、何かを手伝わせようとすると、いちいち指示しなくてはいけないし、そのうえブツブツ文句を言われる。自分でやった方がよほど簡単だ。どうして子供は言われる前に自分から進んで手伝おうとしないのか。(pp.4-5)

長文にお付き合いいただきありがとうございます。

また次回お会いしましょう。