【生徒対応】先生、どこの大学出身ですか?
生徒と接していると、こんな質問が来ます。
「先生、どこ大学出身ですか?」
こんな答えにくい質問の対処について、今回はお話しします。
日々の業務の中の重要なものとして、生徒対応がありますが、答えにくい質問をしてくる生徒もいます。
今回は、学歴を聞かれたときの対処の仕方をいくつかのレベルに分けてお伝えしたいと思います。
1.対症療法レベル
1.「ひ・み・つ♡」
あぁ~、いいですね~。こんな感じでいいですよ、だれも傷つかないし。
一 件 落 着 !
ともいかなくて、以前こんなやり取りをしたことがあります。
私「ひみつ。別に言う必要もないでしょう。今あなたがやるべきことは変わらないし、無関係ですよ。」
生徒「無関係なら教えてくれたっていいじゃん。」
う、なるほど。確かにそうですね。
生徒からすると、対等に話を聞いてくれない先生というふうに見えてしまいます。
2.理屈で訴える
この質問の完璧な返答は無いかといろいろ探していて、このような結論に至りました。
- 学歴は関係ない。いい選手が良い監督になるとは限らない。学歴が高い人しか教員になれないのだとしたら、高校生の子供を立派に育てた人しか高校教員はできないことになる。
- 過去は関係ない、今・明日を生きよう!
一旦納得はしてくれます。しかしこれを言った後むなしさが残り、教育とはほど遠いことをしていることを実感します。
3.丁寧な無視
「今は関係ない、授業に集中しましょう。」
生徒からすると、今やっている勉強が自分の進路にどうつながってくるのか。そして人生の先輩である先生はその進路が人生にどう影響しているのか、いろいろ知りたいことはありますが、この一言で全てのコミュニケーションをシャットアウトしてしまいます。
2.根治療法レベル
対症療法的なテクニックでもその場はしのげますが、根本的な解決に至っていません。
言い負かすこと・論破することで「相手」を言い込めようということが目的になってしまっています。ここでのゴールは先生の威厳を保つことではなく、生徒の成長を心から願い、彼らの将来に対して良い影響を与えることです。
この質問に対して先生がムキになったり、焦ったりしてしまうのは、「自分」の考え方が固定的になってしまっているからです。こちらの記事も参照してください。
根本的な解決法は「相手」ではなく、「自分」を変えることです。
1.傾聴する
これは学歴のマウント取り合い勝負ではありません。生徒の話を聞いてあげましょう。授業が一旦中断したっていいです。全生徒に関係のあることです。
なぜ疑問に思ったか、どんな大学に行きたいのか、どんな大学が良いと思うか、そもそもなぜ大学に行きたいかなど。このとき、詰問のようになってはいけません。優しく会話を引き出すように接してみてください。落ち着いた、和やかな雰囲気が重要です。
そして、彼らが成長のどのプロセスにいるのかを理解してあげてください。
価値観は変化していきます。小学生のときは、足の早い人がかっこよかった。中学生のときは部活動をやっている人がかっこよかった。高校では偏差値の高い人がかっこよかった。などがそれです。
みんな通ってきた道じゃないですか。傾聴して相手の価値観を確認してください。十分に傾聴したら、相手の価値観を否定せず、先生自身の価値観が変わった体験談を話してください。
表面的なテクニックと違って、即効性はありません。何年か後に効果が現れたらそれでいい、と余裕を持つことです。
2.学校の役割って何?
私立学校の実績であったり、公立高校でも学力重点校などに指定されていたりすると、どうしても良い大学に行くという価値観が上位に来てしまいます。授業に集中させる方便として、「良い大学にいけなくなるよ」なんていう脅しもあるかと思います。
しかしここで我々教師が今一度真剣に考えないといけないことは、学校の役割は生徒の偏差値を上げて、(予備校が発表している)ランクの高い大学にブチ込むことだけなのか?というところです。それなら、授業中に静かにスマホでスタディサプリを視聴している生徒は評価5をつけないといけませんね。
現在の価値観の大きな問題点です。偏差値という数値情報は客観的で非常に便利ですが、そこだけが一人歩きをして本来の目的を見失っています。生徒とコミュニケーションを取っていればよくわかりますが、偏差値が低いとダメ人間かというとそんなことはありません(そもそもダメ人間ってなんでしょうね)。
教育は食育にも共通するところがあります。栄養価の高い食べ物が良いのであれば、いずれ食事は全て宇宙食みたいな、栄養を凝縮したキューブ状のものになるでしょう。もっというと、栄養が入ればよいのであれば、常に点滴でもいいですね。しかし食育の大事なところは、食事って楽しいよね!みんなで食べるともっと美味しいよね!っていうことではないでしょうか。
普段の授業からこの観点を意識して教えることが大切です。教科書のノルマをこなすことに躍起になっている先生は今一度深呼吸して考えてみてほしいです。学問って楽しいよね!みんなで探求していくともっといろんなことがわかって楽しいね!ということを。
3.結局何が正解なの?
結局のところ、この質問に対する絶対的な正解は残念ながらありません。
しかし、先生の方が賢いし、”正しい”からという後ろ盾のもと、必要なら叫び、脅し、強要するという対応は絶対的に不正解です。
この生徒の問いに簡単に答えづらくなった現状自体にも問題はあります。
この質問が生徒から出たら、我々も普段の教育方針をもう一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。